前立腺がん治療の選択肢にある小線源治療後の射精リスクを理解し、パートナーと事前に相談し手術を受けましょう。
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前立腺がん小線源治療後の射精
日本は2003年から放射線治療が開始され、有効性と安全性が確認された治療方法です。全国約100施設で小線源治療が実施され、年間約4000人の人が治療を受けています。いっぽう、アメリカではメジャーでヨウ素125という放射線治療を使った小線源治療が既に1990年頃から盛んに行われていて、現在では年間5万5千人以上がこの治療を受けています。
前立腺がんの「放射線療法」には大きく二種類あります。
外照射療法
「外照射療法」とは、体の外側から前立腺がんに向かってX線などの放射線を照射してがん細胞を死滅させます。週5日の通院治療で2ヵ月程続けると1サイクル終了です。
組織内照射療法
「組織内照射療法」とは、体内で局部的に放射線を照射するほうほうで、放射線を照射する量も低線量率から高線量率と大きく2種類にわかれ、そのうち今回ご紹介している小線源治療は低線量となります。小線源治療の手術には2時間程度、入院は数日間程度で済み、体への負担が小さく、また切除手術と同様に前立腺がんを完治させる可能性のある治療法となります。
小線源治療の対象がん
小線源治療の対象は早期の前立腺がんとなり、前立腺内にとどまっているがんに限り治療対象となります。ほかに転移や浸潤が無いことが条件となります。PSA値やがんの悪性度が高い場合には、外照射療法を併用することもあります。
小線源治療の方法
小線源治療は、「シード線源」というとても弱い放射線を出す長さ約4.5mm,直径約0.8mmの小さな線源を前立腺内に50個~100個挿入し、前立腺全体へ放射線を照射します。治療は泌尿器科医・放射線腫瘍医・麻酔科医・看護師・放射線技師などからなる医療チームで行われ、下半身麻酔or全身麻酔。コンピューターがシード線源を挿入する場所と数を計算し、超音波の画像を見ながら前立腺の中へ筒状の針[シード線源]を挿入していきます。治療は保険適用となります。
シード線源はチタン製でカプセル状になっていて、その中には放射性ヨウ素125が密封されています。このカプセルは永久的に前立腺内にとどまりますが、放射線徐々に弱まって1年後にはほとんどゼロになります。
手術後は翌日から飲水・食事・歩行などの制約はなく、通常生活が可能です。
前立腺がん小線源治療後の射精生活
小線源からの放射線は、前立腺で吸収され、体外に放出されるのは微量です。ですから、周囲の方々が受ける放射線量は低いものです。普通に日常生活を送れるのですが、念のため、一定期間は周囲に配慮する必要があります。
性行為は2週間から3週間後から可能になり、普通に射精もできます。
しかし射精した精液の中に小線源が出ることがありますので、必ずコンドームを使用してください。放射線の治療は、手術を受けた後でも射精を伴う性行為ができます。
しかしロボット手術(ダビンチ等)で前立腺を摘出すると前立腺全摘除術では精嚢を前立腺と一緒に取ってしまうので、射精に必要な精嚢の収縮がおこなわれず、射精に伴う精液が出なくなります。
前立腺がんの手術は様々な選択肢があります。早期に発見すれば安全な前立腺がんですが、その裏には、男性が射精を失う辛さとの戦いや葛藤でもあり、パートナーとの関係にも変化を及ぼすことがありますので、ご自身の判断が最終となりますが、パートナーともよく話し合ってから、どの手術を受けるか選択すると、今後の生活も充実したものになるでしょう。